そもそも、僕たちが野球部を作ろうと決めたのは五月中旬のこと。
ちょっとした居酒屋でふざけながら野球部と肉部の設立が決まった。
次の日、野球マニアのA次長に声をかけ、二つ返事で入部したA次長から全社員(24人位)に通達した。その日、A次長は選手(1番センター)兼監督というポジションに自ら就いた。
メンバーの野球経験
・A次長/35歳/少年団のみ
・6課長/32歳/遊び程度、腰に難あり
・ナベ課長/30歳/遊び程度、右手小指に難あり
・R係長/27歳/少年団のみ
・ヨシキ主任/27歳/中学で野球部の幽霊部員。
・忍/24歳/唯一の大学まで野球部。我がチームのエース
・M主任/29歳/中学まで野球部。グローブのひもが切れている。
・サヤカ/26歳/選手なのに女。お兄ちゃんが昔野球部だった。
・T軍曹/23歳/大学でアメフト部のキャプテン。
・イッシー/27歳/未経験。肉部部長
・トガシ/22歳/未経験。自分の名前の発音が変。
・カワムラ/22歳/遊び程度。球がめちゃめちゃ早いがコントロールが。。。
2回程河原で練習をした。石だらけの空き地でボールが異次元の方向へ変化する。
取れるわけない・・・
エース忍は3年ぶりに本格的な投球練習で昔の感を取り戻しつつあった。
対戦相手はネットで募集し、結成から半月で試合が決まってしまった。
相手は専門学校の野球部。顧問の先生からのメールだった。
メールで何度も確認した。「僕たちはとても弱いですよ。選手に申し訳ないですよ」
しかし、顧問の先生は試合をしたいと熱望していた。
6月3日(日)
川沿いのグランドに集合した僕たちは6人しかいなかった。
家族づれでピクニック気分のメンバーもいる。
そこに、少し離れた駐車場から完璧にユニフォームを着こなした集団が現れた。マネージャーも3〜4人いる。顧問の先生は怖そうなグラサンをかけていた。しかも麦茶のタンクまで持っていた。
勝てるわけない・・・
そもそも勝つつもりもなかったが、見ただけで実力の違いがはっきりとわかる。
僕たちが対戦相手で申し訳ないという惨めな気持ちがこみ上げてきた。
軽くアップしているキャッチボールの球がうちのエースより早い。
めちゃめちゃはなれて遠投している外野手。バットで打ってもあんなには飛ばない。
初対面の顧問の先生への僕の第一声は「すいません」だった。謝りたいことがいろいろあったが、とりあえず人数が足りないので、選手を3名借りた。
この三人がわがチームの主力となった。
試合は思った通りの展開。
彼らは甲子園級の実力だった。相手ピッチャーの球は正確にインコースに突き刺さる。早すぎてあまりよく見えない。
スライダーがどんな球なのかも初めて分かった。
打てるわけない・・・
と思った瞬間、腰に難ありの6課長がヒットを打った。記念すべき野球部初ヒットだ。
浮かれた6課長は少し(ほんの1歩)だけリードしてみた。次の瞬間、ものすごい牽制球が飛んできた。ぎりぎりセーフ。
マジで鬼だ・・・
後続は主力の3人。得点をとる唯一のチャンスだった。本気で応援した。それぐらいしか貢献できないと思った。思いが伝わり、打線がつながった。6課長がホームベースを踏んだ。記念すべき初得点だ。
こちらはすでに12点取られている。それでもうれしくてみんなで喜んだ。
試合結果は約18対4
主力3人の頑張りで何とか点を取ることができた。
僕たちの初試合は、申し訳なさと無力さを痛感しながら終わった。