「これぐらい病院なんか行かなくても大丈夫、すぐ治るから」
インフルエンザにかかり40℃近い高熱があるのに絶対に病院へ行こうとしないケンジ。
同僚が心配して電話をかけたとき、ケンジの口から苦しそうに出たのはこの一言でした。
ケンジは学生の頃からの友人。
別に病院が怖いわけでも、治療費に困っているわけでもないのですが、ある日を境に
ケンジは極度に病院に行くのを嫌うようになりました。
それは数年前の出来事でした・・・
「サカグチさん〜」
「サカグチ ケンジさん〜」
ある病院の待合室で彼の名前が呼ばれると、一瞬にして待合室の空気が変わった。
「は、はい・・・」
ケンジは顔をうつむけたまま、誰とも目を合わさないように急ぎ足で診察室へと向かう。
恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤に染めて、絡みつく視線から逃れるように・・・
ちょうどその頃、テレビではタレントの坂口憲二さんが大ブレイクしていました。
そうです、ケンジはいきなり有名人と同姓同名になったのです。
「名前なんて星の数ほどあるのに、なんで俺と同じ名前なんだよ!」
それからのケンジは本当に可哀想でした。
名前を名乗ると、どうしても坂口憲二さんのことを言われ、比べられます。
「へぇ〜、あの坂口憲二さんと同じ名前なんですね。」
「みんなビックリするでしょう。」
「あんなかっこいい人と同じ名前なんて羨ましいですね。」
何を言われても嫌味にしか感じられなくなり、相手の顔色を伺うようになりました。
さらに初対面の人に自己紹介するのを嫌い、苗字だけしか名乗らなくなりました。
積極的だった性格も見る影が無いぐらい消極的に変わり果ててしまいました。
そんな友人の状況を知った私は急いで彼にアドバイスしました。
そのアドバイスとは・・・
- わたし
- 「名前でそんなに苦しむなら改名したら?」
- ケンジ
- 「それができればこんなに苦しんでないよ・・・」
- わたし
- 「もう挑戦したの?」
- ケンジ
- 「当たり前だろ、どうすれば改名できるか調べまくったし専門家の意見も聞いた」
「でもそんな理由では改名できないし、もし改名できても5〜7年後だって・・・」 - わたし
- 「で、今はどうなってるの?」
- ケンジ
- 「もうとっくに諦めたよ・・・」
「そんな何年後に成功するかどうかもわからないものに大金を払えないから」 - わたし
- 「大丈夫だって。3週間だけでいいから今から言うとおりにしてみて」
- ケンジ
- 「3週間って何?3年でも無理だって専門家が言ってるのに・・・」
- わたし
- 「実は俺、こないだ改名したんだ・・・」
- ケンジ
- 「・・・えっ!?」
- わたし
- 「それが・・・改名まで3週間だったから」
- ケンジ
- 「ええっ!?たったの3週間??」
- わたし
- 「そう、3週間もあれば好きな名前に生まれ変わるから」
〜 そして3週間後 〜
ケンジはケンジでなくなったことは言うまでもありません。
彼は堂々と名乗ることができるようになりましたし、病院にも行けるようになりました。